この北町で(209)    ― あの人 この人

               一日の長さについて   

       四小あそべえ館長 きした・まさし

 皆さん、子どもの頃のことを覚えていますか。私はとてもよく覚えています。

下校中、あじさいの葉の裏にカタツムリを見つけて、友だちと一緒にカタツムリと

「遊んだ」こと。近所の下級生の友人と、空き地などで、44ぐらいで野球

(のようなことを)したこと。そのボールがそれて農協の窓ガラスを割ってしまった

こと。夏休みになると、虫籠と網を持って、カブトムシやセミを捕りに出かけたこと。

自宅の近所を(意味もなく)自転車でぐるぐる回っていたこと。家の前の公道でロー

ラースケートをしたこと。そんな私のことを優しく見守ってくれていた母のこと。

 で、皆さん!  とにかく、子どもの頃の一日は長かった、と思いませんか。なかな

か暗くならなかった。私が静岡県西部で生活していたこともあるのかもしれません。

西日本に行くと、夏は夜8時頃まで明るいんです。

 しかし、それだけではないと思います。高校生になっても、昼食後のやる気のない

教師による「現代国語」の授業の50分や、好きな女の子と緊張して過ごしたクラブ

活動の50分。それがなんと長く感じたことか。

  ところが大人になると、一日どころか、一年があっという間に過ぎ去ってしまい

ます。なぜでしょうか。様々な経験を重ねて、ちょっとやそっとのことでは感動し

なくなったからではないでしょうか。加えて、人生に占めるパーセンテージが問題

なのでしょう。5才の子にとって1年は20%10才の子にとっては10%も占めています。

 しかし、50才の人にとって1年はたったの2%です。

 私が1年で長く感じることが多い日は、毎月「1日」です。今月こそ、という

意気込みで、いろんなことをするからなのでしょうか。

  幸い、子どもたちといると、いろんな意味で(笑)、1時間がとても長く

感じることもあります。子どもたちに教えられることもあります。

 毎日を元旦のような気持ちで過ごしたいと思っていますが、これが活字となる頃

には、既に、1年の4分の3は終わっているのだろう。