この北町で(240)― あの人この人 

北コミと子どもたちの思い出  

          元武蔵野市立第四中学校校長

            前教育支援センター長 熊 井 重

平成10年の4月初め、私は初めて四中の新任教頭として北コミを訪れました。当時の四中生が北コミにとってもご迷惑をおかけしているという情報をいただいておりパトロールに出向いたわけですが、大 変驚きました。男子生徒が卒業生や他校生と一緒になって周りの注意を顧みることなく傍若無人ゲームをしたり食べ散らかしたりしていました。春休み中であり子どもたちは新任教頭の私を知っているわけがなく、私の指導を怪しげなおじさんが口うるさいことを言っているぐらいに受け止めていたのかも知れません。私が四中の教頭であることを伝えてもなかなか言うことを聞かず、人間関係ができていない大人の指示や注意が当時の子どもたちの心に届かないことに無力感を感じたものです。
 学校が始まり、様々な場面で子どもたちと関わりや指導の繰り返し、そして北コミの運営委員の方々との度重なる相談や教員によるパトロールを通じて、子どもたちの北コミでの過ごし方が徐々に改善されていきました。粘り強く叱ったり励ましたりしつつ子どもたちを温かく受け入れてくれた運営委員の皆様や地域の方々にこの場をお借りして感謝を申し上げたいと思います。
 その後、北コミのお招きを受けて秋の文化祭には四中の吹奏楽部が北コミの体育館で演奏会を開くことになりました。地域の方々から演奏会はとても好評を得て、以後毎年お招きをいただくことになり現在に至っています。サッカーでスライディングをする女性のイラスト私は平成24年に四中校長を定年退職いたしましたが、縁あって武蔵野市教育支援センター長としてチャレンジルーム(適応指導教室)に通級する児童・生徒の支援に当たることになりました。学校不適応が続く中で運動不足になったり、生活リズムが乱れて昼夜逆転したりして体を動かすことが希薄になりがちな子どもたちにスポーツの場を提供することはとても大切なことです。
 そこで、チャレンジルームには専用の体育館がありませんので、総合体育館のサブアリーナや大野田小学校の体育館をお借りすることになりました。しかし、諸事情で両体育館が使えないこともあり、その時は無理を承知で北コミの体育館をお借りしましたが、とても温かく対応していただきました。こどもたちがバスッケトボールを楽しむ姿が目に浮かびます。 
 私は2年前にセンター長を辞して一練馬区民となりましたが、先日久しぶりに北コミにお邪魔したところ、チャレンジルームは今では毎週一回定期的に使わせてもらっているとお伺いました。実に有り難いことです。  北コミの地域の学校への支援や繋がりはもとより、チャレンジルームをはじめ学校になじめない子どもたちを温かく迎えるスタンスは今後も是非堅持していって下さい。